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論文紹介


業績の詳細

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原著論文抜粋

■「周産期うつ」は一つじゃない—タイプ別に見えてきた母と子への影響と遺伝的背景

本研究では、産前産後にみられるうつ症状(周産期うつ)を、その経過の違いに基づいて4つのタイプに分類し、それぞれのリスク要因、母親の長期的な心理状態、そして子どもの発達への影響を詳しく調べました。特に、妊娠中から出産後にかけて長く症状が続く「慢性型」のうつは、5年後の時点でも高い抑うつ傾向が見られ、子どもの行動上の問題とも強く関連していました。さらに、ゲノム解析を通じて、うつのタイプごとに異なる遺伝的特徴が存在することが初めて示されました。これらの結果は、周産期うつが一様なものではなく、多様な背景をもつことを示しており、それぞれに応じた予防や支援の必要性を明らかにしています。

論文情報

Ohseto H, Takahashi I, Narita A, et al.
Risk Factors, Prognosis, Influence on the Offspring, and Genetic Architecture of Perinatal Depression Classified Based on the Depressive Symptom Trajectory
Depress Anxiety. 2024;2024:1-13.


■食卓から始まる妊娠高血圧予防—カルシウムとカリウムの意外な力

妊娠中に起こる高血圧性疾患は、母体と胎児の健康に大きな影響を及ぼすことが知られています。本研究では、妊娠中の食事から摂取される電解質、特にカルシウムとカリウムの摂取量が、妊娠高血圧症候群の発症リスクに関係していることを明らかにしました。中でも、カルシウム摂取量が少ない妊婦は、妊娠高血圧腎症の発症率が有意に高い傾向にありました。さらに、これらの栄養素の摂取量を組み込むことで、リスク予測モデルの精度が向上することも示されました。本研究は、日常的な食生活が妊娠期の重大な疾患に影響を与える可能性を示した点で、新たな予防戦略の一助となる重要な知見を提供しています。

論文情報
Ohseto H, Ishikuro M, Obara T, et al.
Dietary calcium intake was related to the onset of pre-eclampsia: The TMM BirThree Cohort Study
J Clin Hypertens (Greenwich). 2023;25(1):61-70.

■性格×健康―“外向性”とメタボの知られざる関係

「性格」と「健康」の意外なつながりに迫った本研究では、日本人1,300人以上を対象に、性格特性とメタボリックシンドロームとの関係を詳しく分析しました。特に社交的・外向的な傾向を示す「外向性」が高い人ほど、血圧や血糖、中性脂肪などの異常が複数重なりやすい傾向が見られ、将来的な心疾患リスクにも関係する「メタボリック症候群スコア」との関連も示されました。これまで欧米を中心に議論されていたこの関係性について、東アジア人を対象にした初の研究として、日本人の生活習慣や体質に即した新たな視点を提供しています。性格傾向の簡易な評価が、生活習慣病の予防や早期発見に役立つ可能性を示唆する、注目すべき成果です。

論文情報
Ohseto H, Ishikuro M, Kikuya M, et al.
Relationships among personality traits, metabolic syndrome, and metabolic syndrome scores: The Kakegawa cohort study
J Psychosom Res. 2018;107:20-25.

外部資金

今井精一記念財団 研究助成

マルチオミックスを利用したPreeclampsia予測モデルの開発: 東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査
研究費 (150万円) 
2024年1月1日~2025年12月31日

先進医薬研究振興財団 精神薬療分野 若手研究者助成

周産期うつ病の病型分類と、遺伝的構造・背景因子・予後の解明
研究費 (100万円) 
2023年12月1日~2024年11月30日

武田科学振興財団 医学部博士課程奨学助成

周産期疾患リスク予測モデルの開発:多層オミックスの活用とリアルワールドデータへの挑戦
奨学金 (360万円/年) 
2022年4月1日~2026年3月31日

※研究代表者の資金のみ記載

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